不思議な非音楽と音楽のせめぎ合い MTV Unpluggedの歩き方15〜OA楽曲 #タケウチカズタケ 完全解説10〜

Post date : 2021.05.06

Category : ETC

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帰ってきた全曲完全解説シーズン2
残す所、後3曲となったんですが、本日リモート出演させて頂いたアトロク(ラジコのアーカイブはこちら)の最後の最後で、ウタさんが
「カズタケくんの(アンプラグドに関する)ブログの方も面白いので…」と言ってくれまして、
えー、見てくれたんやーと、驚きつつ嬉しかったですねー。
まあ、備忘録と言いますか、自分的にちゃんと記録しとこうって側面もあるので、
記憶が曖昧にならない内に、全曲解説、コンプリートしておこうと思いまっす!(書くモチベーション上がった、よし!)

もう一丁、オフショット動画を…無観客の客席の様子
座席全てに設置されてるLEDもよくわかると思います

さー、では今回は、言わずもがなのクラシック
「耳ヲ貸スベキ」の、
オレ的見所聴き所を完全解説致しましょうー

「完全解説、さあ行くよっ!」

①この曲の話題になると、Dさんの口から、

「これを作った頃は、サンプラーのファインピッチを弄ったらいけない、とか知らずに作ってて…」

という話がよく出てくるのだが、「ファインピッチって何???」という方が
ほぼ大半だと思うので、その説明をしておきますと、
レコードから、お気に入りの箇所をサンプリングしてきて曲を作る、という作業工程の中で
2種類、3種類、それ以上の違うレコードからサンプリングをしてきて、
それらをサンプラーの中で組み合わせる時に、
どーしても「テンポ」「ピッチ(音程)」を調整する必要が出てきます。(ごく稀に偶然ピッタリ合うなんて事もありますが)
そこで、例えば2種類のA、Bという、全く違うレコードからサンプリングしてきた素材があったとしたら、
Aの「テンポ」に合うように、
Bの素材を合わせるため、その再生スピードを調整する時に
「ピッチ(音程)をちょっとずつ低くすることで遅く再生する」ないし、その逆
をする事が出来るんですね。これが「ファインピッチを弄る」という作業なんです。
この作業は「テンポは合う」んですが、一方で「ピッチ(音程)が狂う」んですねー。
この狂い方というのが、ドレミファソラシド、では表現出来ないような音程になってしまう、というものなんですね。
HIPHOPという音楽の性質上、後ろの伴奏がドレミファとか、んなもんは関係なかったんですね。
ラップするのに、そんなのかんけーねー、って事です(ドレミファにも、ソラシドにも媚びないのがイカしてた、って事です)

この「耳カス(以下略称で書きます)」という曲は、メインのベースのループも、
フックで入ってくるフルートのフレーズも、いわゆるピアノのドレミファソラシド、に乗っかった音ではないです。
しかも、その2つの要素は、音楽的な話でいうと、説明難解な組み合わせになってます。
その事を、Dさんもウタさんもよく「楽理にかなわない」とか「非音楽的」みたいな風に仰ってます。

が、しかし!
大切はことは、そんなことじゃなくて
聴いてて、かっちょいいか?どうか?
って事なんですよね。

余談というか、ちょっと話それますが、
以前amebreakで受けたインタビューの中で、オレが「人間発電所」のトラックのカッコ良さ、
それを改めて生演奏するミュージシャンが、その音の何に対してリスペクトを払って演奏するのが
よりHIPHOPなのか?みたいな事を話した事があって、
学理に合わないからって、音楽的に説明のつく音に勝手に変えて演奏してしまう事への抵抗感があるんですね。
だって、そーゆー風に聴こえてて、カッコいいんだから、
勝手に説明のつくものに変えちゃったら、元の物のかっこよさが損なわれるんじゃないか、って。

こういうせめぎ合いは、Dさんとの間で結構ありましたねー
不思議だったのは、Dさんは
「音楽に寄せていってくれ」
と言って学理に乗せるような方向へ押してくる一方、オレは
「ここは元曲のまんまでやりたいです」
と言って、音源に忠実な方向へ、Dさんのいう所の非音楽的な方向へ持っていこうとする、せめぎ合いだったんですね。
んー、お互いに無いものねだり、というか、お互い逆の方向へと進みたがるという…
こういったやり取りを沢山出来た事が、結果今回のMTV Unpluggedのサウンドに行き着けたって事なんだと思いますね。

あれ…なんの話だっけ?…あ、耳カスだったな。

つまり結果、フルートとギターにお願いしたフレーズは、なるべく音源に近いニュアンスを
フルートのくりちゃんにお願いして再現してもらってます。
ここは聴きどころになってると思います。
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↑「しっかり聞いてくれや!頼むで」

②メインループとして入ってくるストリングス、
これは敢えて、2ndヴァイオリンのなっち、とヴィオラのともちゃんの2人で弾いてもらってます
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これは、元曲のストリングスがこのフレーズ以上のものは無い中で、
余計な、派手なアレンジを加える事なく、フックでは広がりを持たせる為には、どうする???と考えた結果、
ヴァースはシンプルに2人でプレイしてもらって、フックで初めて4人になる、というアレンジを施しました。
渋いアレンジですけど、すげー気に入ってますね。

③オリジナル音源のムードをなるべく保ちたい、という意味で重要だったのはドラム。
ドラムのこーちゃん(脇山広介)自身の持ってる、エイト(8ビート)を刻んでても、
うっすらとスウィンギーに聴こえる…この「うっすら」という塩梅が
大変重要でして、この曲のドラムには、なんとも独特なスウィング感があるんですね。
それを表現するのに、こーちゃんのグルーヴが見事にマッチしてるんですよ。
このことは、一度も話したことなかったですけど、JINさんがオフィシャルHPのロングインタビューの中で触れてくれてるんです!
これはホントにうれしかったなー(^^)…オレのことじゃ無いんですけどね。
けっちゃんは、この曲でも、こーちゃんとのコンビーネーションばっちりで
2人で1つのリズムグルーヴを作ってくれてます
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④ここからが、原曲になかった要素の話なんですが、
要するに、原曲にはコード感を示す音が入ってないんですね。今回の編成で言うと、ピアノとギターの役割ですね。
ベースラインから、ある程度の響きは想像出来るんですが、
その中でどのコードを今回採用するのか?ってのは、オレのチョイスなので、丁寧にやりました。
あと、ピアノはフックにグルーヴを強化する為にだけ出てくるという、必要最小限のプレイに徹してます。
そんな中で聴き所は
3’06″と4’00″にぶち込んだ超男気満タンのピアノ・グリッサンド
楽譜に出来ないくらい、沢山の音を同時に鳴らしてます(^^)
このグリッサンドと、ザ・グレート・アマチュアリズムの2’58″地点にぶち込んだグリッサンドは、
自分でも「よくもまあ、高尚なMTV Unpluggedのステージでこんな音出したな」ってくらい楽理に合わないプレイやったと思います、はい(^^)

⑤もう1つ、ギターも元曲には入ってない要素だったんですが、
自分が今回つけたコード感を聴いてると、哀愁漂うアコギの入るイメージがしたんですね。
そこで思い浮かんだのがこの曲↓

そこでアレンジのデモを作ってる時点で、キーボードでアコギのフレーズを
こんなイメージで、修正無しでツルッと1回弾いたものを入れてみたんですが、
なんとギターのナッポが、本番でもその感じを割とそのまま再現するように弾いてくれてました。
要所要所で呼び込んでくる、哀愁たっぷりなギターは、曲のムードにハマったんじゃないかなあ、と思ってます、いえい
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↑サンキュー、ナッポ!

んー、回を重ねるごとに説明のマニアックさと熱量が増していくこのブログ。
なんかわかんない事とか、もっと聴きたいことある方はメールでもどうぞ。
まあ、そのうちclubhouseでそんな感じのやつもやろうかなあ、と。
と言うわけで今回はここまで、残りは2曲…まったねー
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「完全解説、感想待ってるよー」

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